カテゴリー
Art Art Interaction CIID Copenhagen Design Innovation

CIID-IDP2017のはじまり

今年一年間、デンマーク・コペンハーゲンにあるCIID [Copenhagen Institute of Interaction Design]という機関の提供するInteraction Design Programへ留学します。

CIID とは

CIID [Copenhagen Institute of Interaction Design] はインタラクション・デザインを看板に掲げた機関で、Education, Research, Consulting, Incubator(Nest)の4つの部門から構成されます。それぞれ簡単に説明します。
http://ciid.dk/

ガラス張りの螺旋階段が特徴的なCIID概観。フロアごとに部門が分かれている。

Education

IDP [Interaction Design Program]という一年間のコースを運営しています。このプログラムは一年のコースで、世界中から様々なバックグラウンドの人が集まりインタラクション・デザインを学びます。今回私が入ったのはこのプログラムです。

Research

いわゆる研究部門です。デザインプロセスの研究や、企業との取組みなどを行っているようです。日本からも2年前と今年、ソニーからvisiting researcherが一年間滞在しています。

Consulting

いわゆるデザインコンサルティングです。リサーチからソリューション作成まで行っています。クライアントはデンマーク国内よりもそれ以外の方が多いようです。コンサルはクライアントとの秘密保持があるので、具体的な内容はまったくわかりませんが、少人数で、クライアントとCIIDコンサルメンバーが同じ人数ぐらいで、かなりがっつり一緒に仕事をしていくスタイルで進めているようです。

Incubator (Nest)

アーリーステージのスタートアップのインキュベーターです。オフィスとCIIDネットワークの提供を行っているようです。4-12ヶ月でステージを切って支援をしているようです。CIIDの卒業生が最終課題で提案した内容を事業化するためにIncubatorに残ることもあるようです。

Home

私が入ったIDP [Interaction Design Program]は、いわゆるデザインスクールの一つとして近年知名度があがっていますが、まだ創設から11年目ということでかなり若い機関で、日本人の参加者もまだ4人目です。

とはいえ、教育の独自性の高さや、卒業生ネットワークが協力であることなどから、特にヨーロッパでの評価が高いようです。古いデータですが、世界のトップ25デザインスクールにも選ばれています。
http://www.businessinsider.com/the-worlds-25-best-design-schools-2012-11?op=1&IR=T/#25-hong-kong-polytechnic-university-1

IDP [Interaction Design Program]の特徴

CIIDのIDPは他のデザインスクールとは異なる特徴がいくつかあります。

初日のスライドから。右にいるのが CIIDのCEOのSimona.

Interaction Design

まず、インタラクション・デザインを専門とした学校が珍しいですね。有名なところではRoyal College of ArtのDesign Interactionぐらいでしょうか。専門、といっても領域を制限するわけではなく、軸足を起きながら広げていく方針です。また日本では、インタラクション・デザインという概念自体があまり一般的ではないというところもあり、あまり正しく認知されていないようにも思いますので、徐々に理解していけたらと思います。

Diversity

個人的にはこれが最大の特徴だと思うのですが、多様性が非常に高いという点です。
IDPは毎年最大で25名しかとらないのですが、バックグラウンドと国籍がバラバラになるように人を選出しています。
たとえば、今年2017年のIDPでは、17カ国から23名が参加しています。そしてバックグラウンドは、グラフィックデザイン・インダストリアルデザイン・ウェブデザイン・ソフトウェアエンジニア・ハードウェアエンジニア・広告・人文・法律家・コンサル・行政などなど、様々です。

Cross-disciplinary

IDPでは一年間の中で、様々な内容を学びます。しかしながら、それぞれの内容をそれぞれ学ぶのではなく、有機的に結合させる術を体得することを目的としているように思います。そのために、Peer to Peerラーニングが求められ、異なるバックグラウンドの人から学ぶということが求められます。

1年間すべての授業・作業・プレゼンなどが行われるStudio

Group Work

上記と共通していますが、P2Pラーニングを促すために、一年の最後のFinal Project以外の全てのプロジェクトはグループワークで行われます。様々なバックグラウンドの人とのグループワークを通じてあらゆるパターンのグループダイナミクスを学びます。

グループワークを効果的にするためのワークショップ・アイスブレイクなども様々実践する。写真は連想ゲーム的なアイスブレイクで使ったポストイットの連なり。

Intensive

たった一年とは思えないほどの盛りだくさんの内容を学びます。そのために、週ごとに異なるプロジェクトを実施します。大まかにいうと、月週の前半にイントロダクションがあり、グループワークを経て、金曜日にはプレゼンを行う。というようなスケジュールとなっています。木曜夜はほぼ帰れないそうです。

授業の内容は、デザインはもちろん、エレクトロニクス、プログラミング、リサーチ、チームビルディングなど多岐に渡ります。また、CIIDには常駐の教員というのがおらず、世界中で第一線で活躍しているデザイナーや専門家が教えに来るという形をとっているのも特徴です。

ここで何をするのか?

これまで長い期間、メーカー企業で研究開発から新規事業開発までをやってきて、その中で必要性を感じデザインプロセスを学び、自分なりに咀嚼し実践する中で、それなりの有効性は実証できたと感じる一方で、企業でのデザインプロセスによる実践の限界と、デザインプロセス自体の持つ課題のようなものに気づき始めました。

一方、個人として10年強ほど、現代美術の文脈で作品や音楽などを制作してきたのですが、これらを完全にビジネスの文脈と外れた全くの別物として関わらざるを得ないことに疑問を抱きフラストレーションを感じるようになりました。アーティストとしての視点がビジネス開発に役立つのではないかという思いから、企業の取組みの中で、いくつかのアートとビジネスを融合させるような事例を実践し、強く手応えを感じるまでになりました。

この手応えを元に、「アートシンキング」というコンセプトを3年ほど前からいろいろな人に共有していたのですが、現在の企業活動に疑問を感じている人たちの一部(とくに、デザインが有効ではないかと信じ、すでに取り組みを始め行き詰まりを感じている方など)から共感していただく機会もあり、可能性が確信に変わってきました。

しかしながら、企業の中で、実験的で未完成なトライアルを続けていくことの難しさとできることの限界を感じ、より実践的な状況で考えを深めたいと考えるようになり、留学という選択肢を選びました。特にCIIDには以前より興味を持っていたということもあったので、今回縁があって学ぶ機会を得たことをきっかけに思い切って飛び込んでみました。学生の中でダントツで最高齢だと思いますし、未だに英語もほぼわからない状態なのですが、、できるところまでトライしてみようと思います。

コペンハーゲンでは、実践を重ねながら「アートシンキング」をより具体化した「アート・インタラクションデザイン」のコンセプトを具体化していきたいと考えています。

CIIDの所属学生は日本人としては4人目ですが、過去の所属の方々はみなさんすばらしいブログをやっていたので、このブログでもたまにCIIDのことを書いていきたいと思います。

「CIID-IDP2017のはじまり」への2件の返信

はじめまして。CIIDへの留学を検討している者ですが、私自身も英語力が無くネックになっております。。最初英語がほぼわからない状態だったということですが、実際その点いかがだったのでしょうか。

コメントありがとうございます。
実際その通りで、わからない状態でスタートして困る場面も多かったのですが、CIIDは多国籍ということや、個々の能力や個性を尊重した上でグループでプロジェクトに取り組むということもあり、お互い配慮し合う文化はあると思いますので、程度にもよりますが何とかなるとは思います。
来年2月に日本でウィンタースクールというコースの一部を体験できるワークショップが開催されるので、ご興味あればこちらに参加されてみるのも良いと思います。
https://dentsu-bds.com/news/ciid/

ウィンタースクールの説明会も計画中ですので、ご希望あれば確定次第ご案内いたしますので連絡いただけたらと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です