resonate 2017
ベオグラードで開催された『resonate 2017』に行ってきたので、簡単にレポートをまとめる。
resonate 2017
http://resonate.io/2017/
resonateは、デジタルアートのサイトであるCreative Applications Networkの主催で2012年から開催している、カンファレンス・ミュージックフェスティバルで、EU圏のインタラクションデザイン・デジタルアート界隈では有名なイベントだそうです。特に今年はsonarがライブやレクチャーのアーティストサポートなどもしていて、EUイベント間の横のつながりが見えたりします。
開催地は、セルビアの首都ベオグラードで、今年2017年の開催は4月19-23日の日程で、日中はカンファレンス・ワークショップ、夜はライブ・クラブイベントという構成で開催されました。
個人的には、近年ベオグラードの音楽シーンがアツい、的な話を耳にすることがあったのでこの地域に興味があったのと、インタラクションデザインの観点からも、数少ない特化したイベントということもあったので、後学のために参加してみた。
セルビアと聞くと、最近までニュースで内戦やコソボ紛争の話などを聞いていた気がしたのですが、大規模な空爆があったのももう20年前、セルビア共和国として独立したのが2006年でもう10年前だと知って、思い込みって怖いなと思いました。現在は復興中で経済状況は良いとは言えず、戦時中に被害を受けた建物がそのまま放置されていたりはしますが、街中はかなり近代化していて治安もかなり良いとのことでした。
セルビアの通貨「ディナール」は1ディナール≒1円ほどであるが、物価は感覚的には日本の半分かそれ以下。デンマークの1/4といった印象で、旅行者に非常に優しい。実際、近年は観光業に力を入れているようである。
雑然とはしているが、比較的過ごしやすいのではないだろうか。
イベント概要
イベント会場は、昼の部は基本的にKinotekaという場所だけ行われ、2つのレクチャーとワークショップが同時に進行するという形式だった。
http://www.kinoteka.org.rs/
ワークショップは参加してしまうと一日まるごとかかってしまって他に何も見られないので参加していないが、それほど面白いテーマはなさそうだった。(かつてはワークショップがメインだったっぽいが、いまでは参加者の大半はそれなりになんか作ってる人が多いし、ネット上に情報があるので、ビギナーレベルのワークショップは不要なのだと思う)
レクチャーは、様々なクリエイターが自分の作品の過去作やプロセスをシェアするという内容だが、発表者の幅が広くバラエティに富んでいてよかった。
ちなみに日本人の登壇者はtakram.Londonの牛込さんだけだったが、参加者は何人かいたようだった。
夜の部は、市内にあるクラブ複数箇所にて行われた。
Dom omladineというライブハウス的な場所とDrugstoreというオオバコのクラブがメイン。Drugstoreは、想像してた以上にオオバコで、おそらく3000人とか入るのではないかと思われる。郊外の倉庫っぽいところで、雰囲気も含めてわりと良かった印象。
余談だが、ベオグラードの音楽シーンがアツい説は、ある意味正解だけど、ロンドンやベルリン的な盛り上がり方はしていないと思われる。
人口に対してナイトカルチャーを楽しむ場所と人の数は多いし、夏には近隣の無人島などでパーティが多数行われているそうで、そこにヨーロッパ各地から人が集まって盛り上がっているという。しかし、今回も出演者も殆どは国外のヨーロッパのアーティストが多く、地元が育ってないところなどを見ると、物価が易いせいもあるのかもしれないが、やや消費されているような盛り上がり方に感じた。
実際、現地の人にも聞いた話によると、ベオグラードのアーティストはどんどん国外に流出しているという話である。また、音楽のメインストリームから5年遅れている、とも言っていた。実際に聴いたいくつかの現地の人の音楽はちょっと前に流行った懐かしい感じの音だったので、これについては、なんか納得してしまった。
ただ、個人的には、ライブハウスで見た現地のアーティストWoOのギター・ソロが、10年ぐらい前の音響・ポストロックな感じで新しさは無いのだけど、とても好きだった。
http://www.belgradenoise.net/music.html
サマリー
見た中で面白かったレクチャーを目次的に紹介。
Kate Sicchio
http://blog.sicchio.com/
ダンスのライブコーディングというテーマに取り組んでいる人で、
正直作品は…なところも多いが、コンセプト的にはすごく可能性のある面白い領域だな、と感じた。
AGF
Ars Electronicaの審査員などもやるサウンドアートの大御所。
(と知らず、去年のアルスのライブではじめて見て、そのときはイマイチだと思ってしまったが。。今回は内容もパフォーマンスも非常に面白かった。)
過去のプロジェクトの紹介と、ライブ。活動家としての側面もあるが、基本的には真っ当なサウンドアートに取り組んでいるアーティスト。レクチャーの合間のパフォーマンスは非常によかった。
Yosuke Ushigome
takram.Londonのデザイナーで、スペキュラティブデザインのアプローチでの作品を多数発表している。
どれも観点が面白く、かつ、クスっとさせる部分もあって最後まで引き込まれてしまう。
NORMALS
http://normalfutu.re/
ファッション業界のデザイナーらしいが、デジタルアートのアプローチで様々な取組みをする。プレゼンスライドがインタラクティブだった。
Christopher Bauder
この人は、ベルリンベースのクリエイティブエージェンシーで、
Robert Henkeのプロジェクトの人です。作品は見たことある人も多いのではないだろうか。
https://www.youtube.com/watch?v=zEepuIzOjXc
詳しくはこちら。面白かったのは、各プロジェクトの企画書を紹介してくれて、行政に通すためのコツなども含めて紹介していたところ。
これとか、今見てもなかなか。
Gene Kogan
http://genekogan.com/
機械学習で、アートを生成するアーティスト。
この人のプロジェクトはどれも面白いのだけど、これは手書きの地図を衛星写真の地図にするというもの。
https://opendot.github.io/ml4a-invisible-cities/implementation/
これとか、ほんと凄い。
ちなみにCIIDではこの人の授業が6月にあるので楽しみ。
Phill Niblock
大御所サウンドアーティストのPhill NiblockとThomas Ankersmitのパフォーマンスがあった。メインのThomas Ankersmitのモジュラーシンセが出過ぎ感があって、演奏的にはイマイチだったように思う。
Pablo Valbuena
http://www.pablovalbuena.com/
主にプロジェクタを使った作品を創るアーティストであるが、非常に良い。
過剰に映像を使うことを無く、プロジェクションマッピングで現実の延長としての光の作品を創る人で、個人的には見た中で一番すきだったかもしれない。
非常に盛りだくさんで、概要だけでもまとめることができないぐらいだが、インタラクションデザインやメディアアートをやってる人で他のクリエイターと交流したい人にはとても良いイベントではないかと思いました。